突撃!グループ一番星名車訪問
”形の残らないものに金は使わない”
オーナーこだわりの夢千代丸が今、闇夜に浮かぶ・・・・・・。
夢千代丸

トラッカーでないものが、アートへの情熱だけで作り上げたクルマ。それが夢千代丸である。数えきれないほどのマーカー、素人離れしたペイント、そして卓越したセンス。何年たっても衰えないその輝きは、一生懸命に人生を歩んできた兄弟2人の輝きでもある・・・・・・。


夢千代丸オーナーはうどん屋を経営する佐野兄弟。
 この世界には親子二代、兄弟そろってトラッカーというケースも少なくない。だが今回紹介する夢千代丸の佐野息吹、静馬の2人はトラッカーではないにもかかわらず、力を合わせてアートを製作し、商売を切り盛りしているという変わり種。 その2人のアート・スピリットはまさに鳥羽一郎の名曲「兄弟船」の世界をほうふつさせる。名古屋市内から約1時間。三重県郡にある、2人が経営するうどん店「浅田屋」を訪ねた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
須賀 「イベントでもずいぶん顔を見なかったねぇ。うどん屋をやっているって話は聞いてたんだけど、こんなに大きな店だとは思わなかったよ。」
息吹 「2年前に建て替えたんです。まあ店が小さいときは仕事をまかせてイベントにも行けたんだけど、大きくすると日曜日の売り上げを落とせないからね。」
須賀 「最初に会ったのはもうずいぶん昔になるかな。浪花会のころだね。」
息吹 「南紀白浜でイベントやったころじゃないですか。7、8年前になりますよ。」
清水 「遊楽会は何年くらいになるの?」
静馬 「旗揚げして5年になりますね。最近はあまり参加できないですけど。」
「2人もトラッカーだったの?」
息吹 「自分は半年だけしか経験がないんですわ、トラックは。高校出てすぐ乗っていたんだけど親父が商売始めるっていうんで・・・・・・。」
須賀 「それがうどん屋だったんだ。」
息吹 「そうなんです。」

ナイトシーンは圧巻!マーカーは600個以上。

自らASADAYAと名乗ってしまうのもシャレっけ。

左サイドのペイントはパステルカラーでまとめられた。あおりも高く一番星で最も背の高い清水さんが並んでこの通り。
CHERGE
THE
DETAILS

 

右サイドはサンセットビーチのブラシ絵。ハンドメイドとは思えない美しい仕上がり。

リアのペイントは2年前に入れた。女形には定評のある幸さんが並んでも色っぽさではひけをとらない(?)。

「関西風と言えばやっぱこのギンギラの迫力だよ。」落ち着いたグリーンのマーカーはナイトシーン以外ではシックだ。

トラックレースで潰したのでバンパーは2代目。

日曜日に店を手伝ってくれるバイトの皆さんと一緒に。


シックに派手に・・・・・・。夢千代丸は時代を超えたナイトの王様。
清水 「じゃあ最初は親父さんの仕事を手伝っていたんだ。」
静馬 「それが親父はもともと建築業をやっていて、うどん屋を出してからも続けていたんで、店はボクら2人がやっていたんですよ、最初から。」
須賀 「えっ、まだ高校出たてだろう?」
息吹 「そうなんですわ。弟はまだ高校生だったんですけど、学校終わったらすぐ手伝いに来て・・・・・・まあいいかげんなもんですわ(笑)。」
「手打ちがウリになってるけど、修行はいつしたの?」
息吹 「最初は機械で製麺していたんだけど、これからはグルメの時代が来るだろうと思ったんで、自分が23歳の時に弟と交代で名古屋に修行に行ったんですわ。」
須賀 「先見の明があったんだね。ところでアートトラックを始めたきっかけはなんだったの。」
息吹 「親戚にトラッカーがおって飾っていたんですわ。で、その人がよくイベントに連れていってくれてね。」
静馬 「あと、映画も見ましたね。」
息吹 『トラック野郎』の第1作なんか映画館で7回見ましたよ。学校も行かんと。正直『寅さん』は見たことないよ(笑)。」
須賀 「この前キンキンに会ったけど、またやりたいって言っていたよ。年をとってからのトラック野郎もいいだろうって。」
息吹 「シックに派手に、かな。とにかくナイトシーンが大好きやから。」

古いクルマであるが電気関係は完璧にメンテナンスされている。「ナイトシーン命」というオーナーの心意気だろう。



機械いじりが大好きで隅から隅までオールハンドメイド!
須賀 「このクルマは昔カミオンで賞とったんだよな。」
静馬 「ええ、第2回の時に八代賞を。」
清水 「古いクルマだけどピカピカだね。」
息吹 「昭和57年車ですよ。当時は星流丸とか日光丸、将軍丸なんかおって派手やったですからね。近ごろ飾りが関東風になって少し興味が薄れちゃったけど。」
「飾りはどこで作ったの?」
息吹 「これオールハンドメイドですわ。弟と2人でね。」
「役割分担なんかあるの?」
静馬 「兄貴は電気はいじらないですね(笑)。あとはだいたい2人でやります。」
須賀 「ペイントは?」
息吹 「これも自分らでやったんですよ。」
清水 「えー、玄人はだしじゃない!」
息吹 「昔、カミオンの特集でペイントの描き方みたいのがあったでしょ。」
須賀 「ああ、やったね。竜馬号を田んぼの中にもっていって。」
息吹 「それ読んで見よう見まねで。拡大器も買うてね。ホンマ難しかったですわ。」
須賀 「器用だねー。飾りもペイントも両方やるなんて珍しいよ。さっきガレージを見たらバイクが何十台もあって驚いたけど、機械いじりが本当に好きなんだね。」
息吹 「今は仲間がうちでツーリングクラブもやってるんです。まあクルマやバイクをいじるのはどうしても夜中になるけど、それがあるから仕事にも身が入るんですわ。このクルマも名車と呼ばれた以上しっかり維持していくつもりですわ。」
須賀 「その意気でこれからも頑張ってほしいね。」

船型のバイザーとプロテク上部のメーンアンドンがフロントマスクをどっしりと重厚なイメージでまとめ上げている。

サイドバンパーはコンパクトながらアンドン回りにマーカーを配し、ナイトシーンではやはり威力を発揮する。
夢千代丸

現在遊楽会事務局長を務める佐野息吹さんが弟の静馬さんと共同で作った名車。ベースになっているのは昭和57年式のキャンター2tダンプ。小誌でも第2回カミオン賞で八代亜紀賞を受賞している。飾りはオールハンドマイドで設計、加工から取り付けまですべて自分たちでこなし、ペイントまで自分たちで入れてしまったというから驚く。ナイトシーンの迫力は特筆モノで、使用したマーカーは600〜700個。走今日距離は2万3000km。
Special Pick Up
やはりこのクルマを語るうえで欠かせないのがド迫力のバスマーク。びっしりと並べられたマーカーは日光丸や将軍丸などの名車と同様、関西アートの王道といえる流れにあるだろう。「当時は赤や黄色のマーカーがはやっていたけど、グリーンにすると昼は落ち着いて見えて夜ハデでしょう。このクルマはシックで派手なのを目指したから・・・・・・」と、オーナー。マーカーの色ひとつにもこだわりがあるのだ。
●佐野息吹・静馬(さのいぶき・せいま)
ラッセルタイプのリアバンパーにはスカイライン10連テールランプを配してシャープにまとめた。
息吹(兄)昭和34年1月8日生まれ。静馬(弟)昭和37年4月6日生まれ。ともに血液型A型。三重県員弁郡出身。5人兄弟の4男と5男の2人は兄が高校卒業後、父が始めたうどん店をまかされ、以後二人三脚で店を軌道に乗せる。3人の兄は全員トラッカー。高校時代からアートに目覚め、浪花会に所属。5年前には遊楽会の旗揚げに参加する。最近はバイクいじりやバンド活動にも熱を入れている。ともに2児あり。